「R」の称号って?


自動車の名前にRとつけば、やはり特別なモデルを想像してしまうモノ。
フィアット500にRが付けば、それだけで期待も膨らむモノですが、あの「R」の意味ではありません。

この500RのアールはRINNOVATA(リンノヴァータ)=今日本でもよく耳にする「リノベーションされた」という意味なんです。
各モデルの細かい歴史はこちらをご覧いただくとして、あまり日本ではメジャーとはいえない500Rについて、イタリアでのお話を少々。

気になるリノベーションの内容ですが、1972年当時の道路交通状況にあわせて、主に動力性能のアップデートが施されたチンクエチェント。

このNuova 500と呼ばれる2代目フィアット500の登場は1957年。
登場後15年が経過した1972年でも、今で言うシティカーとして盤石の人気を誇り、その愛されっぷりは後継車として登場したFIAT126をもしのぐほどでした。

しかしながら、名前の通り500ccほどの排気量では、次第に拡充する高速道路や、増える家族と荷物を載せて走るにはしんどい状況が生まれていたのも事実。周りがまだまだのんびりしていた50年代60年代とは異なり、500を取り巻く環境も変化していたのです。

いろいろな意味でこの500をアップデートしたものが126だったわけですが、やはり、チンクイーノの人気は高く、ついに終了と思われた72年にこのRが継続販売されるに至りました。

©editoriale domus

この500Rのエンジンは型番である126A5という数字からもわかるように、後継車の126のエンジンを搭載しています。これまでの499.5ccから595cc/23馬力に強化されており、泣き所であったドライブシャフトなどもより丈夫なモノになっています。厳密にはフィアット595と呼んでも良いかもしれません...。

ちなみにアバルト595Sは27馬力。もちろんこのRは神経質なところなどなく、フツウにゲタとして乗れる本来のチンクイーノが満喫できるのですが、なんせ595SSの最近のお値段と来たら、ちょっとした新車のアルファロメオが買えちゃうくらいになってますからね。


メーター周りも、Lとは違い、Fまでに搭載されていたシンプルな丸いものに戻されているのが特徴。
昔ながらの雰囲気の内装を満喫でき、それでいてメーカー純正のアップグレードが施された「リノベーション版」として登場したRは、実用的な近代500として人気を博したというわけです。



上の雑誌の特集号の表紙には「100km/hで走れる!」と書いてあるのですが、このくらいの巡航速度が保てれば十分に今日の利用にも耐えるということを指しています。


イタリアでは、同系統のエンジンですがさらにパワーのあるフィアット・パンダ30のエンジンに載せ替え、アバルトよりも強力な動力性能を得たRもいたりします。


フロントのフェイスの菱形FIATエンブレムについてはいろいろ言う人もありますが、イタリア的には「まあイヤなら換えれば良いじゃん?」といった感じです。

というのも、イタリアではバンパーこすりなどキズのウチに入らないので、パンパーやフェイスなんてパーツはいくらでも入手が可能。よって、お好みでアバルトの顔にしたり、しれっと旧エンブレムに換えていたりなんてこともあるわけです。

個人的には菱形のFIATエンブレムはロゴとしては秀逸だと思っているので、これはこれでアリとも思っていますがどうでしょうか?


もともとバイク以上自動車未満として作られたNuova 500。登場から60年を超えてなおシティカーとして完成されたたたずまいは、まさにイタリアのデザイン、自動車の底力を垣間見ることができます。


現代のハイブリッドカー顔負けの燃費や、いまだ健在の「乗る&走る喜び」を提供してくれるチンクイーノは、日本の道路でもますます活躍できると思います。

 

Previous
Previous

Jan-01,2022/ Buon Anno!

Next
Next

Oct-25,2021 / A112N in Le Garage